パーキンソン病者の運動をスムーズにする手がかり

リハビリ課 作業療法士 渡邊哲也
2024.5.31

パーキンソン病者の運動をスムーズにするため、リハビリテーションではキューがよく用いられます。この「キュー(cue)」とは、合図、きっかけ、手掛かりといった意味があります。パーキンソン病の方は、平地を歩くときはじめの一歩が出にくい(すくみ足)ことがあります。また歩き出したとしても、歩幅が小さくなって転倒することもしばしばあります。しかし同じ人がいざ階段を昇ろうとすると、スタスタとリズムよく昇ることができるのです。これは階段の一段一段が足を踏み出す手掛かり(キュー)となっているためです。今回は、このキューについて説明します。パーキンソンの方のスムーズな運動に役立てましょう。

1.キューとは

運動のきっかけとなる感覚への刺激のことです。主に聴覚や視覚を刺激します。聴覚刺激としては、メトロノームを用いることもありますが、その方になじみがある歌や行進曲などリズムがはっきりとした曲を使う場合もあります。視覚刺激としては、床に一定間隔でテープを貼る場面がよくみられます。

またこのキューは、刺激の使い方によって外的キューと内的キューの2つに分類されます。

2.外的キュー

外的キューは、自分以外から得られる刺激のことです。図のように、聴覚刺激としては音楽やメトロノーム、視覚刺激としては歩幅に合わせた一定間隔の線が使われます。

3.内的キュー

内的キューは、伴奏などがない状態で歌を歌ったりリズムを刻んだりすることです。自分が発する刺激のため、外的キューよりもリズムが合わせやすいといった報告もあります。

4.キューの使い方について

実生活にこのキューを取り入れることはいくつかの課題があります。家のいたるところで音楽が流れていると、同居している方にとっては不快となる時があるでしょう。

また自分で歌を歌いながら歩く行為も、端から見ると不自然に見え現実的ではないかもしれません。リハビリテーションの領域では様々な効果が報告されているキューですが、生活の中で使用するにはまた検討の余地がありそうです。

もし生活で不自由さを感じられましたら、担当のリハビリテーションの職員に相談しましょう。キューの使い方についてアドバイスをもらうことができます。

参考文献 木村大輔:パーキンソン病患者のすくみ足における内的リズム形成障害と遂行機能の関連,高次脳機能研究 第40巻第3号