マインドフルネスについて ~病とともに、いまを生きる支えに~

リハビリ課 理学療法士 富樫誠二
2024.12.4

はじめに

季節は、すでに晩秋から玄冬に向かっています。「秋の日は釣瓶落とし」といいます。そのためか、秋は、なんとなく寂しく、もの思いに耽る季節ではないでしょうか。秋の夕暮れるには、三夕として有名な和歌があります。

  • 心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫(しぎ)立つ沢の 秋の夕暮れ
  • 寂しさはその色としもなかりけり 槙(まき)立つ山の秋の夕暮れ
  • 見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ

詠み人の綴ってきた人生の物語から感じた、さびしさ、わびしさ、恋しさという情感が伝わってきます。
私たちの一生は、生・老・病・死とともに織りなす人生の物語として存在します。一病息災は、昔のことで、今は多病息災、難病息災だといえるのではないでしょうか。病とともに、今、生きていることの不安、苦しみは、はかり知れないものがあります。そこから生じるストレスを軽くするために、今回は、マインドフルネス瞑想法を紹介します。

我が家から見た秋の夕暮れ

マインドフルネス(Mindfulness)とは

「今この瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方、存在の在り様」と定義されています。
マインドフルネスは、今この瞬間に注意を集中させ、その状態を受け入れることを目指す心理的な実践です。具体的には、自分の思考や感情、身体の感覚に対して評価せずに気付きを持つことを指します。これは、ストレスを減少させ、心の健康を改善するために非常に有効な方法です。

坐って行うマインドフルネス瞑想の紹介

座り方の説明

胡(あぐら)坐、半跏趺坐(はんかふざ)、結跏趺坐(けっかふざ)があります。坐位の安定性を得るためには、坐禅で用いる半跏趺座、結跏趺坐が適しています。難しい場合は、胡坐でもかまいません。関節や筋肉が硬い方は、ストレッチをおすすめします。

マインドフルネス瞑想の実際

  1. 静かな場所を選ぶ: 静かで落ち着いた場所を選びます。
  2. 坐位は、あぐら位、半跏趺坐、結跏趺坐、どの坐り方でもよいが、座布団やクッションを使用し、骨盤を立て(前傾すること)背筋を伸ばし身体の力を抜いている楽な姿勢で座ります。目を閉じても開けても構いませんが、リラックスできる状態を保ちます。
  3. 呼吸に集中する: ゆっくりと深呼吸をし、呼吸のリズムに意識を集中させます。息を吸うときと吐くときの感覚に注意を払い、他の考えが浮かんできたら、再び呼吸に意識を戻します。
  4. 現在の瞬間に意識を向ける: 呼吸だけでなく、体の感覚や周囲の音など、現在の瞬間に意識を向けます。過去や未来のことを考えず、今この瞬間に集中します。
  5. 優しく意識を戻す: 瞑想中に他の考えが浮かんできたら、それを無理に排除しようとせず、優しく呼吸や現在の瞬間に意識を戻します。
  6. 短時間から始める: 初めての方は、5分から10分程度の短時間から始め、徐々に時間を延ばしていきます。
結跏趺坐

おわりに

この原稿を書いている最中に「生きる」という詩を書いた谷川俊太郎さんが、逝去されました。「生きる」という詩は、生きるということを見事に表現している詩だと思います。「生きていること、今生きていること」から始まる詩です。多くの人に読んでいただきたい詩です。
私にとって、「生きていること、今生きていること、それは感謝すること、そして、静かな情熱を持ち続けるということ」です。
15年以上前に難病(OPLL)と診断され、8時間以上にもわたる手術をうけました。DrやNs、家族をはじめ多くの人のおかげで、退院と同時に、仕事に復帰できました、それ以来、元気で患者さんや学生さんに寄り添ってきたことで、生かされてきました。

参考文献:

ネルケ無方:ただ坐る .光文社新書

近くの山里にて