リハビリ課 理学療法士 富樫誠二
2024.10.2
はじめに
パーキンソン病のリハビリテーションとのかかわりは、40年以上も前になります。その頃、私は、神奈川県総合リハビリテーションセンターに入職していました。当時、総合リハビリセンターとして、設備、体制ともに東洋一といわれていました。そのためか、県内外から、いろいろな疾患の方がリハビリテーションのために入院、入所されていました。
私が担当した疾患は、パーキンソン病や脊髄小脳変性症の方が多く、初めて全国学会(1980.5)で発表したテーマも、パーキンソン病の重心動揺に関するものでした。臨床において、手がかりとなるパーキンソン病診療ガイドラインや理学療法診療ガイドラインがなかった時代です。
今では、あたりまえのように新しい、臨床での疑問がでてくると関係する文献を渉猟し、そこから臨床的推論を立てプログラム作成し、実践し、その推論と効果の検証をするようになってきました。これは、新しい知見によるエビデンスづくりのためのプロセスです。パーキンソン病に対して、年々、新しい知見が出ています。エビデンス(根拠)に裏打ちされたパーキンソン病の治療は進歩していると感じています。
パーキンソン病の病期に応じたリハビリテーションの重要性
パーキンソン病の治療は、薬物療法が中心になりますが、リハビリテーションと併用することで、日常生活の能力向上、QOLの向上に効果をあげることができます。そのためには、病期に応じたリハビリプログラムを実施することが重要です。病期の早期(ヤール分類Ⅰ~Ⅱ)では、ストレッチ・レジスタンス(筋力増強)トレーニング・バランス・有酸素運動の4つのトレーニングの組み合わせ(複合運動)が重要となります。病期中期(ヤール分類ⅢからⅣ)では転倒防止のためにバランス運動が重要です。病期後期(ヤール分類Ⅴ)では、呼吸・嚥下、ポジショニング、可動域維持が重要です。症状は様々ですが、症状に応じたオーダーメイドのリハビリプログラムを立案し、実施することが大切です。
有酸素運動のすすめ
不活動性の改善を目標としたトレーニングと有酸素運動によって脳神経が可塑的に変化し、運動、認知、情動の改善に寄与したという報告がありました。(図1) 有酸素運動は、パーキンソン病患者の体力向上、さらに運動機能の改善、精神機能の改善に効果があります。有酸素運動は、生活の質を高めるために有効な手段となります。
有酸素運動として、トレッドミル、自転車エルゴメーター、リハビリ体操やダンスなどがあります。ダンスや体操は、リズムに合わせて体を動かすことで、バランス感覚や協調性を向上させる効果があります。
●有酸素運動の例
○エルゴメーター
○トレッドミル
レジスタンストレーニングのすすめ
レジスタンストレーニングは、筋力強化を目的に行われる方法です。いわゆる筋トレのことで、筋肉量を増やして筋力を増強します。レジスタンスとは抵抗という意味があり、自重を利用した運動、重りやチューブ、機器を使用して行うなどの方法などがあります。
●レジスタンストレーニングの例
○スクワット
○ランジ
◆ランジのポイント
膝がつま先より前に出ないように: 膝がつま先を超えないように気を付けましょう。上体をまっすぐ保つ: 前傾姿勢にならないように、上体をまっすぐ保ちます。
深く腰を落とす: 腰をしっかりと深く落とすことで、下半身に十分な負荷をかけます。バランスを取るのが難しいですが、慣れてくると効果的に下半身を鍛えることができます。
○レッグプレス
おわりに
- パーキンソン病のリハビリテーションとして、有酸素運動、レジスタンストレーニングは、生活の質を高めるために有効です。生活の中で、ホームエクササイズ・自主トレーニングとして継続していくことが大切です。
- ストレッチ・バランストレーニング・レジスタンストレーニング・有酸素運動(全身調整運動)の4つのメニューを複合して行うと効果的です。
- 有酸素運動、レジスタンストレーニングの効果を出すためには、栄養管理は必須です。リハビリにとって栄養管理は必要不可欠の関係にあります。