パーキンソン病リハビリテーション最前線(VR)

リハビリ課 作業療法士 渡邊哲也
2024.8.23

パーキンソン病医療の展望

パーキンソン病の診断のサポートや治療効果判定にウェアラブル端末やVRの利用が有用とされる報告が散見されます。Yuzhe Yangらの報告では、呼吸ベルトと呼ばれるウェアラブル端末を装着してパーキンソン病者の呼吸パターンを測定します。呼吸パターンの変化の測定によりパーキンソン病初期段階の診断に役立てることができます。VRは診断だけでなく治療として活用した報告がありました。
1991年「レナードの朝」によってパーキンソン病の認知度が高まった時代に比べると、パーキンソン病の診断・治療は劇的な変化をしていると考えます。
ここではリハビリテーションでも使用されるVRについて説明します。

VRとは

みなさん、VR(バーチャルリアリティー)というものをご存じでしょうか。仮想現実と訳されることがありますが、図のように頭にゴーグルを装着し、ゴーグルを通してみている空間で実体験に近い体験ができるものです。手にはコントローラーやリモコンなどをもって見ている仮想空間の中で物を操作することもできます。筆者もゲームでVRを経験したことがありますが、かなり現実に近い体験ができました。

VRを治療に

パーキンソン病のリハビリテーションにおいて、仮想現実(VR)技術は有望な方法とされています。VRリハビリを通じて、患者は安全でストレスのない環境で運動能力を向上させることができると言われています。韓国の国立保健研究院の報告によれば、VRリハビリにより、パーキンソン病患者のバランス機能が顕著に改善したとされています。歩行機能については10m歩行テストにおいて有意な改善が見られました。

わが国のリハビリテーションでのVRの活用はまだ一般的なものではありませんが、ゲームとして親しまれつつある現状を考えると、そう遠くない未来にVRが一般的な治療となる可能性もあるでしょう。

参考

1)Yuzhe Yang他:Artificial intelligence-enabled detection and assessment of Parkinson’s disease using nocturnal breathing signals,Nature Medicine volume 28, pages2207–2215 (2022)
2) パーキンソン病診断の最先端研究:AI・VR・バイオマーカー等の活用:https://jp.edanz.com/blog/ai-parkinsons-diagnosis