アパシーってなに ?

リハビリ課 作業療法士 渡邊哲也
2025.2.7

「パーキンソン病者の生活の困りごとと工夫②2024/3/7」のコラムでパーキンソン病の精神面の症状について説明しました。そこで記載した幻覚やうつ症状以外にアパシーという症状がパーキンソン病では高頻度で見られます。ある報告では約40%でアパシーの症状が見られたそうです。
今回は、このアパシーとは何か、どのような対応をすればよいか説明します。

アパシーとは

無気力・無関心が主な症状で、生活に影響が出ている状態です。みなさんも生活のなかで時折面倒くさいと感じることはありませんか。アパシーはこの面倒くさいが長期的に持続します。うつ病とよく間違えられるのですが、うつ病と異なりアパシーは辛い感情がありません。そのかわり自分がアパシーの症状が出ている事に気が付かない可能性も高いのです。またアパシーがなぜ起こるか、明らかになっていません。脳の血流低下と考えられていたり、生活の中での目標の喪失と述べていたりする文献もあります。また1月の副院長のコラムにパーキンソン病でドパミンが減少する説明がありましたが、このドパミンは快の感情に関わる物質です。生活の中で快を見出せなくなることもアパシーの原因となるかもしれません。このような背景をもとにアパシーの治療では薬物療法よりも心理療法が選択される場合があります。次の項目ではアパシーの治療について説明します。

アパシーの治し方

まずやることとしては、規則正しい生活を送ることです。これは今後の治療のきっかけになるだけでなく睡眠障害や栄養問題の予防にもつながります。

  1. 朝起きるとカーテンを開けてみましょう。朝食をしっかり食べ、散歩をするのもよいでしょう。日の光を浴びて軽い運動は、その日をより良いものにしてくれるでしょう。
  2. 1週間に一回掃除するなど、簡単なことを目標として行動しましょう。きれいになった部屋を見ることで、次も掃除しようかなという前向きな気分になります。さらに習慣化するとよいですね。
  3. まずは一つでもよいので趣味を取り入れましょう。歌を聴く、絵を描くなど簡単なことからでも始め、少しずつ心が充実するのを感じます。

まとめ

「アパシーの治し方」で記述したことが難しければ、心理療法や薬物療法をやってみるのもいいかもしれません。とはいえ何かを行うエネルギーがない状態なので、日頃の生活の中で、わずかな成功体験やちょっとした気持ちいいを積み重ね、時間をかけて治療すると良いでしょう。わからないことがあれば、当クリニックの作業療法士や心理療法士にご相談ください。

参考文献
平栗 潤一:アパシーとは|基本的な言葉の意味や症状、認知症の介護時の対応など、介護のほんね

https://www.kaigonohonne.com/guide/dementia/symptom/apathy