リハビリ課 作業療法士 渡邊哲也
2024.7.5
パーキンソン病の治療の一つに「脳深部刺激療法(DBS)」という方法があります。これは体に神経刺激装置を埋め込んで脳を電気信号で刺激して症状を改善する治療法です。脳の刺激部位によって、効果は若干異なりますが、ふるえなどの運動障害を軽くする、服薬量を減らす、日内変動を穏やかにして良い状態を保ちやすくするなどの効果が期待できます。すべての患者様に適応するわけではありませんが、日本では2000年に医療保険の適応となったことからこの治療を選択する人もいらっしゃいます。
またリハビリテーションの分野でも、「脳深部刺激療法(DBS)」を行った方の術後のリハビリテーション報告が学会などで散見されます。例えば作業に焦点を当てることで情緒安定など精神面での改善が見られた報告や長期罹患歴を持つ方でもパーキンソン症状と日常生活に改善が認められた報告がありました。
脳深部刺激療法(DBS)のメリット・デメリット
メリットは活動や行動範囲が増えることです。服薬量が減ることで、薬を飲むことを気にしなくてもよくなります。また左右の症状に違いがある場合は、別々の対応をすることができます。
デメリットは、定期的に刺激装置のメンテナンスをする必要があります。またしびれや言葉の障害、めまいなどが副作用として現れることがあるようです。副作用は重篤でない場合が多いですが、気になる場合でも医師によって調節が可能です。
まとめ
治療によるメリット、デメリットは上の記載の通りですが、その受け止めは個々で異なります。活動的になることで副作用が気にならない方もいれば、わずかな副作用のため治療を後悔する人もいるでしょう。これはこの治療(DBS)に限った話ではありません。例えばメガネでも、視力を調節できるメリットもあれば、メガネをかけるわずらわしさもあるでしょう。最終的には自分で選択する必要があります。私たち医療職は、皆さまが選んだ選択の中でより良い生活が送れるよう支援します。
なお当クリニックでは脳深部刺激療法(DBS)の手術を受けることはできませんが、手術を受けられた方のリハビリテーションは行っています。詳細は当クリニックのリハビリテーション職員にご確認ください。
参考文献
- 高多 真裕美 , 東川 哲朗:脳深部刺激療法を施行したパーキンソン病患者の在宅生活における課題を考慮し,実践した作業療法,第51回日本作業療法学会
- 安達 明完ら:脳深部刺激療法術後より趣味活動獲得に向け作業療法を実施した症例
―農作業動作に着目した介入―第54回日本作業療法学会 - 日本定位・機能神経外科学会:脳深部刺激療法(https://jssfn.org/patient/treatment/dbs.html)
- 藤本 健一:DBSについて知る(https://dbs-chiryo.jp/about-dbs/risk/)