動作と行為から生活の質(QOL)を援助する

リハビリ課 理学療法士 富樫誠二
2023.11.29

1.はじめに

パーキンソン病は一般的に長い経過を辿ることが知られています。長い経過の中で、多様な症状がみられます。日常生活機能レベルは、日常生活にほとんど介助を要しないレベルから、日常生活に全面的介助を要するレベルまで多岐にわたっています。薬物療法とともに、病期に応じたリハビリテーションが、日常生活動作機能を改善する、あるいは低下させないために重要です。そして病とともに生きるその人らしい生活とQOLを支援することが求められます。リハビリテーションは、パーキンソン病によって破綻した生活を再建するために、「動作と行為」から援助し、QOL向上につなげます。そこで、今回は、動作・行為の援助とQOLについて述べます。尚、以下、長い経過を考慮し、病とともに病に負けず生活していく人という意味をこめて、パーキンソン病患者とはせず、パーキンソン病者とします。

2.「動作と行為」からQOLを援助するということ

動作からの援助とQOL

動作は身体の運動によって行われる、具体的な課題をもった作業のことです。動作を行うには、身体各部の運動(動き)が必要です。例えば寝返り動作は、首の動き、体幹手足の動きが連続して起こります。連続した動きができなければ、動作は円滑に動作ができません。その場合、動作を分析し、問題となっている動きを抽出し、その動きを改善します。多くの日常生活動作は、複数の動作で構成されています。排泄動作、入浴動作などがその例です。このような複合的な動作は、組み合わされた動作を動作ごとに分析し、最終的には一連の動作として指導します。日常生活動作が部分的にできるようになるだけでも、QOL向上にとっては重要なことです。動作の援助で大切なことは、観察です。観るべき視点をもっての観察は、リスクを見逃さない援助です。「よく観るということは、よく援助しているということ」です。

行為からの援助とQOL

人間としての尊厳・権利としての営みが行為です。行為とは、人間としての動作に意味をもっている行動といえます。つまり人間の行動のもつ意味からとらえると、行為となります。その行為は、パーキンソン病者の倫理観・価値観・誇り・信念、羞恥心などが関連し、個別性の対応が求められます。さらに、倫理的原則として、自律性の尊重があります。自律性の尊重とは、病人が自律的にものごとを決定し、行動することを尊重し、それを妨げないことです。排泄行為の援助を考えてみると、見られたくない行為としてのプライバシーの配慮や、食べる場所と排泄の場所はわけて、トイレで排泄したいという意志の尊重、言葉かけ・態度などに留意することが求められます。日常生活の行為には、その人らしさの個性やこだわりがあり、行為を尊重する援助がQOLの援助につながります。

3.おわりに

リハビリテーションとは、単に機能を回復することではなく、「人間らしく(自分らしく)生きる権利の回復」や「生活の再建」といわれて久しい。パーキンソン病者の日常生活を援助することは、その人を丸ごと援助することにほかなりません。リハビリテーションの意味する「その人らしい行為やQOL」を援助するには、職業人である専門職としての矜持と、組織人としての多職種連携が重要です。それには、支えきるという覚悟が必要です。最後に、かつて大阪河﨑リハビリテーション大学で、ご一緒に働いた地域リハビリテーションの第一人者で畏友である故山本和義教授のお言葉をお借りして終わります。


 「単に支えるのではなく、支えきることが大切だよ。君に覚悟があるかだよ」
 いまでも、私の背中を押す言葉です。

参考文献
山本和義:支えきること,年友企画,2007.