パーキンソン病のお話 その2

副院長 菊本修
2023.11.7

パーキンソン病について、お話を続けます。

パーキンソン病とは、どのような病気でしょうか?パーキンソン病は、「動きが悪くなる」病気です。「動きが悪くなる」とお話しますと、うまく理解していただけないことがありますので、少し詳しく説明します。

「動きが悪くなる」とお話しますと、「力が入らなくなる」と考える方がいらっしゃいます。パーキンソン病では、力は入ります。力が入らなくなるのではありません。「力は入るのに、動きが悪くなる」のです。

では、どうして、「力は入るのに、動きが悪くなる」というようなことが生じるのでしょうか?「脳は、場所によって、する仕事が異なる」という特徴があります。役割分担があるのです。難しい言葉になりますが、「力を入れる」仕事をしている脳の場所や経路を「錐体路(すいたいろ)」と呼びます。この錐体路が障がいされると、力が入らなくなります。力が入らなくなることを、「脱力(だつりょく)」や「麻痺(まひ)」といいます。たとえば、脳の動脈が閉塞する脳梗塞(のうこうそく)で、錐体路が障がいされると、右半身の麻痺や、左半身の麻痺が生じます。パーキンソン病では、錐体路は障がいされませんから、力は入るのです。

ここで、「動き」について、考えてみましょう。「左の肘を曲げる」動きを例にします。「肘を曲げる」仕事をしている筋肉を、「上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)」といいます。力こぶができる筋肉です。一方、上腕二頭筋の反対側には、「肘を伸ばす」仕事をしている「上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)」という筋肉があります。左の肘を曲げるときには、脳から、「左の上腕二頭筋に力を入れる」ように、指令が出ます。同時に、脳からは、「左の上腕三頭筋には力を入れない」ように指令が出ているのです。「力を入れる」のを「スイッチオン」、「力を入れない」のを「スイッチオフ」とします。「スイッチオン」と「スイッチオフ」が上手にできないと、「スムースに、左の肘を曲げる」ことができなくなることが想像できると思います。この「スイッチオン」と「スイッチオフ」を調節している脳の場所や経路を「錐体外路(すいたいがいろ)」と呼びます。パーキンソン病は、錐体外路が障がいされて、「スイッチオン」と「スイッチオフ」が上手に調節できなくなることにより、「動きが悪くなる」病気です。